先週から日本中が寒波に襲われていますね
そこで、普段あまり寒くない地域から雪山に行く場合に事前に確認したいことをまとめました
まずは駆動方式を確認しよう
いわゆる、FF (フロントエンジン、フロント駆動) や FR (フロントエンジン、リア駆動)、4WD/AWD (四輪駆動) というヤツです
ご自分の車がどの駆動方式が把握している方はそれぞれの特徴までお進み下さい
自分の車の駆動方式が分からない場合の確認方法
1つ目は、車検証に書かれている車両の型式を各メーカのHPなどで検索する方法です
私は “グーネット” さんのカタログが他メーカどうしでも横比較できるように同じ項目名でまとめられているので良く使っています
例えば、TOYOTAのハイエースだと以下のような型式になります
・QDF-GDH211K ・・・ FR
・QDF-GDH206V ・・・ 4WD
2つ目は、実際に車の裏側 (底面) を見て判断する方法です
駆動輪に対してはドライブシャフトが接続されているので、タイヤの軸に向かって車体中央からのびる棒 (ドライブシャフト) がある方が駆動輪になります
四駆の場合は、全てのタイヤに向かってドライブシャフトがあります
駆動方式別のそれぞれの特徴
今回は雪山へ行く前提で走破性について重点を置きます
居住性や製造コストなどについてはざっくりいきます
駆動方式 | 走破性 | 運転難易度 | 居住性 | 燃費 | コスト |
---|---|---|---|---|---|
FF | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
FR | △ | △ | 〇 | ◎ | 〇 |
4WD | ◎ | △~〇 | △ | △~× | △ |
MR | △ | △ | × | 〇 | △ |
RR | 〇 | △ | △ | 〇 | △ |
では、駆動方式ごと1つずつ見ていきましょう
FF (フロントエンジン、フロント駆動)
最近の車はFFが主流ですので、多くの方が該当すると思います
(SUVでもFFが多数派です)
FFは表を見ても欠点らしいところがないバランスの良い方式です
まず、雪道で重要な走破性ですが、これはフロントに車の部品の中でも最も重量物であるエンジンが載っていてそのエンジンの重量が一番良く掛かる前輪が駆動されます
駆動輪のタイヤと地面の接地面に重量 (荷重、面圧) が掛かることでよりエンジンの力を地面に伝えやすくなり、走破性が良くなっています
また、後述のRRもエンジン直下に駆動輪がきますが、FFでは人間も前の方に乗ることが多くその分の重量も駆動輪に掛かりやすいのでFFの方がより有利となります
雪道での難易度も素直なので運転しやすいです
最近ではFF車が多いので、慣れているというところも大きいです
居住性、燃費、コストはエンジンと駆動輪が全て前方にまとめられるので効率が良いです
これから雪山に行くための車を選ぶならFFにすると無難ですね
ちなみに欠点は、最小回転半径がFRより大きくなりがち (小回りが利きにくい、最近はかなり改善されています)、ハイパワー車が作りにくい、普通のアスファルト路面での発進加速が悪いなどがあります
しかし、これらはそれほど大きな問題ではないです (普通に運転するだけなら気になることはありません)
FR (フロントエンジン、リア駆動)
大型車やバン、スポーツカーでは標準的な方式です
FRは車の構造的に理想に近いものです
前輪は操舵を専門で担当し、後輪は駆動を専門とすることでタイヤの性能が活かしやすいです
但し、雪道では事情が変わってきます
FFでも説明した通り駆動輪に重量を掛ければ掛けるほど雪道等の悪路では有利です
(トラクションが良い、と言います)
FRはエンジンが前で駆動輪が後ろなので重量物であるエンジンの重量を十分に駆動輪へ掛けることができず、雪道では一回止まってしまうと動けなくなったりします
雪道での運転は、止まってしまわないようにしたり、後輪をなるべく滑らせずに発進させたりと気を使うことが多いので難しめです
居住性やコストは前方のエンジンから後方の駆動輪へ動力を伝えるプロペラシャフトという部品が車体下部を通るのでFFよりは少し悪いです
燃費は基本的には良いですが、燃費重視の車でFRはみたことないのであくまで駆動方式以外の条件が同じならという意味です
雪山用でわざわざFRを選ぶのはあまりお勧めできませんのでご注意を
4WD/AWD (四輪駆動)
雪道といえば四駆!そう思っている方も多いのではないでしょうか?
半分正解ですが、慣れない方は多少の注意が必要です
4WD/AWDは全ての駆動輪で車を動かすので他の駆動方式に対して、走破性は優れます
後ほど説明しますが、あくまで “四輪全てが” 駆動された場合です
駆動方式は四駆だけど、豪雪地帯ではその利点が活きない車種も多いのが現実です
雪道での運転は以下の理由で注意が必要になってきます
①多少路面が悪くてもグイグイ進むので、平均速度が高くなりがち
② “ヨンクだから大丈夫!” という慢心がありがち
①は確かに発進は他に比べて簡単なので、どんな状況でも他方式より有利だと勘違いしてスピードを出してしまうことにあります
前提として、4WDが有利なのは発進だけだと思って下さい
カーブを曲がる時、ブレーキを掛ける時、これらは駆動方式に関わらず同様に働きます
これらの状況では駆動方式よりもタイヤ性能や車体の重量配分が優勢です
駆動方式は殆ど※関係しないのでゆっくり走るように心掛けましょう
※駆動方式で重量配分が変わったり、カーブの際にアクセルを踏んだ時の挙動は変わってきますが、それより速度を落とすことが全然大事です
②も①と同様に4WDだからという謎の安心感を持つ方が多いので気を付けて下さい
豪雪地帯ではなんちゃってヨンクと言える車があることが拍車をかけています・・・
4WDでもリヤタイヤが突然横滑り (ドリフト状態) になることは良くあるので、対処できるできないに関わらず緊張感を持った方が自分や他人の為です
居住性や燃費、コストは他方式に対して不利なので、4WD購入の際は上記を考慮しても選ぶ価値があるか検討する必要があります
4WDと他方式の違いを理解していれば最高の選択肢に間違いないです
MR (ミッドシップエンジン、リア駆動)
ミッドシップといえばスーパーカーの代名詞ともいえる駆動方式です
日本でもTOYOTAのMR-2やMR-Sがミッドシップ車として有名です
この駆動方式はエンジンが前後の車軸の間に配置されており、前後重量バランスが良く高性能なスーパーカーでは良く見られます
かの有名な “Ferrari F40” や “Ferrari F355” などが採用しています
( “Bugatti Veyron” や “Lamborghini Gallardo” は高出力の為にミッドシップエンジンの四輪駆動車となっています)
こちらの方式は各タイヤへの重量 (荷重) が分散されているので乾燥した舗装路では素晴らしい性能を引き出しますが、雨や雪といった条件が悪くなるとトラクションが掛かりにくくなり不利となってしまいます
MRは一般的に座席の後ろ~後輪車軸の間にエンジンが置かれるのでFRよりはマシかもしれません
居住性はエンジンが前後車軸間に置かれるので、非常に悪いです
燃費はFR同様に比較的良いです
コストは殆ど作っていないといので非常に高価になりがちです
(MR-2/MR-Sはかなり頑張って安価で売っていました)
雪道用として考えるならMRはやめた方が良いでしょう
車両価格も高いものが殆どですし・・・
RR (リアエンジン、リア駆動)
RRといえば Porsche ですよね!
走破性は車軸とエンジンが同じように後方になるので、良いといえます
FFはエンジンの他に人間の重量も掛かるのでRRより有利です
運転の難易度は後方に重量物がある独特の感じになるそうなので難しいと思います
一旦リアタイヤが滑ると立て直すのに苦労するでしょう
居住性や燃費、コストはリアエンジンが殆ど Porsche くらいしか作っていないので良くはないです
そういったことを度外視して作られています
(構造的にはFF同様有利になりますが・・・)
結局どれが良いか?
これらの特徴を踏まえるとFFをおススメします
4WDも欠点を許容できれば非常におススメです
ちなみに私は4WDを選びました
タイヤとチェーン
タイヤは夏タイヤ (ノーマルタイヤ) と冬タイヤ (スタッドレスタイヤ) に大別されます
基本的に雪山を目指すなら、冬タイヤ+チェーン携行が良いでしょう
冬タイヤ (スタッドレスタイヤ)
冬タイヤスタッドレスタイヤとも呼ばれていて、雪道や氷道を走行することを想定して作られているタイヤのことを指しています
古くはタイヤに陸上のスパイクのようなトゲ (スタッド) を付けたものでしたが、雪道でない道路を痛めてしまうのでトゲのないタイヤとして開発されました
夏タイヤとの違いは大きく3つです
①低温でもゴムが硬くなりにくい
②路面の水分を吸収する細かい溝がある
③雪に食い込むような溝 (パターン) になっている
①ゴムは温度によって硬度が大きく異なります
低温ほど硬く、高温になると柔らかくなります
雪道では温度が低いのでゴムが硬くなりやすいです
硬くなると路面の凸凹にぴったりと密着することができなくなりタイヤが滑りやすくなってしまうので、冬タイヤでは低温でも硬度が高くならないように成分を工夫しています
②③BRIDGESTONEの解説が分かりやすいです
CMで聞く “乾いた氷は滑らない” です
注)一般的に氷が滑りやすいのは水の膜ができるためと考えられていますが、正確にはまだ解明されていない物理現象です
まず、雪や氷はタイヤの圧力によって融点が下がる (水の方が氷よりも密度が高い為) のでタイヤが載ったところで氷が溶けて※水の膜ができ、滑りやすい状態になります
これを冬タイヤの表面にある細かい溝 (や孔) で吸収することで滑ることを抑えています
※融点はどんなに圧力が上がっても-22℃程度よりも下がることはないので、極端に寒い地域では水にはなりませんので逆に安全です(笑)
また、乾いて滑りにくい状態になっているとはいえ、そもそもの摩擦係数が低い (静止摩擦係数µ=0.1~0.5程度) ことと、一度滑り出したら摩擦係数が殆ど0 (動摩擦係数µ’=0.1以下) なので摩擦以外で抵抗力を発生させなければ危険です
そこで雪に引っ掛かるようにエッジが多くなるようなパターンとなっています
※乾いたアスファルトの静止摩擦係数が0.8程度 (スポーツタイヤは1.0程度)、濡れた路面が0.4~0.6程度です → DUNLOP解説頁
チェーン
冬タイヤを装着していても滑ってしまう状況があります
例えば、パウダースノーが厚く積もった場合などです
このような環境では冬タイヤだけでは不十分でチェーンを装着して雪により引っ掛かりやすくしてあげることで走ることができます
取り付ける車輪は基本的に駆動輪となります
4WDの場合はより車重の掛かる車輪 (車検証に載ってます)、殆どの車は前輪です
もちろん四輪全てに付けてもOKです
チェーンは各商品で取り付け方が異なるので事前に予習しておくことをおススメします
夜中に寒い中、なかなか取り付けられないと悲惨です。。。
また、チェーンで舗装路を走るとチェーンが切れて車軸に絡まったりする危険性があるので、雪が深い場所だけで使うようにしましょう
非金属製で舗装路もある程度走れるものもあるようです。
但し、私は使ったことが無いのでどれほど使えるのかは分かりませんので、悪しからず。
タイヤサイズ
冬タイヤのサイズについてです
一般的には夏タイヤと同じサイズにしている方が多いと思います
基本的には夏タイヤと同じで良いのですが、細いタイヤを選択できるならその方が雪道では有利です
その理由は、細いタイヤだと雪との接地面積が小さくなるので、タイヤが雪に食い込みやすくなり滑りにくくなります
それとチェーンも付けやすくなります
細いタイヤを付ける場合はインチダウンなどしてご自分の車の車重に耐えられるタイヤを選ぶ必要があります
・BRIDGESTONE – 空気圧別負荷能力対応表 (LI値と空気圧と耐荷重)
・DUNLOP – インチアップ、サイズ変更について
エアゲージがあると空気圧の調整に便利です。
今はこんなものにもデジタル表示があるようです。
燃料 (主に軽油は注意!)
軽油は低温地域に行くと凍ってしまうことがあります
(ガソリンは-100℃以下という超低温なので気にしなくてOK)
その為、雪国では凍結防止の添加剤を加えた軽油を販売しています
雪山へ向かう前に必ず現地近くで給油をしましょう
以下に軽油の種類ごとの温度をまとめますので参考まで
夏場は特1号 or 1号の軽油が販売されます
冬季は寒冷地では3号 or 特3号が販売されます
(冬季の寒冷地以外は2号軽油です)
目詰まり点を下回ると燃料が噴射できずにエンジンが掛からない可能性があります
軽油の種類 | 特1号 | 1号 | 2号 | 3号 | 特3号 |
---|---|---|---|---|---|
流動点 | +5℃以下 | -2.5℃以下 | -7.5℃以下 | -20℃以下 | -30℃以下 |
目詰まり点 | – | -1℃以下 | -5℃以下 | -12℃以下 | -19℃以下 |
但し、これらは全て販売されている軽油に入れ替えた場合なので、なるべくタンク内の軽油を減らしてから給油できるように調整して下さい
冷却水とウォッシャー液
地味なことですが、冷却水とウォッシャー液にも気を付けたいですね
いずれも殆ど (売ってる状態の) 原液にすれば-20℃~-30℃程度まで凍らないようになりますので、目的地の温度に合わせて希釈量を調整して下さい
(どれだけ薄めるかはパッケージの説明欄に書いてあります)
冷却水は凍ってしまうとオーバーヒートにもなりかねないので必ず確認して下さい
ウォッシャー液は出なくても構いませんが、寒冷地は融雪剤が撒いてありフロントガラスなどがかなり汚れるのでウォッシャー液が凍らない対策をしておくと良いです
調合済みでそのまま使えるクーラントです。
希釈せずに使えば-40℃まで使えます。夏場は冷却効果が下がるので薄めた方が良いです。
-30℃まで使えるウォッシャー液です。私はいつもこれを使っています。
雨も良く弾くのでおススメです。(冬場以外は結構薄めても大丈夫です)
その他、あると便利なもの
補助的なものになりますが、雪払いするほうきやガラス面の氷をこそげ取るスクレイパーなどがあると現地での帰り支度が捗ります
また、長靴を持って行くと足が濡れずに済みます
スクレイパーは小さなものよりも柄が長い大きいものが便利です。
補足動画
駆動方式のところで書いたなんちゃってヨンクとは以下のように悪路で空転してしまう (動画内ではSUBARU以外の) 車のことです
これは、別にメーカが悪いわけではないです
普通の泥道・砂利道なんかでは4WDである恩恵を十分に享受できるはずです
上の動画にあるような “普通じゃない” 悪路の走破性まで求めると日常での使い勝手が悪くなったりコストが上がったりするから、普通はここまでやりません
・燃費が悪くなりやすい (常に四輪を駆動する仕組みだと走行抵抗が大きい)
・小回りが利かなくなる (悪路で滑らないようにLSDを効かせると小回りしなくなる)
・コストが上がる (電子制御・センサーの追加やLSD追加になる)
SUBARUは全車雪道対応を謳っていて、バッテリーまで大きいものが採用されています
このような理由から海外では根強い人気があるようです
ちなみにスポーツタイプのグレードはLSDがより強くなっていたり、パワーもあるので実は悪路に強いです
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