2018年3月2日(金)/ 2018年9月7日(金)/ LTSpice, PC, アナログ回路, スイッチング回路, 小技, 電子回路

こんにちは。今回はDC/DCコンバータの種類と特徴についてまとめます。

DC/DCコンバータは最近では殆ど全ての電化製品に入っているのではないでしょうか?
発熱が少なく直流電圧を上げたり下げたりを自由にできるので近年の小型製品には必須技術です。

そこで、まずは基本となる回路構成と動きを見ていきましょう。
最近は専用のICが数多く出ており容易に設計できますが、それでも動作原理を理解していないと効率良く十分な性能のDC/DCコンバータの設計は難しいです。

LTSpiceがあると便利なので、未インストールの方は以下の記事を参考にして下さい。


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DC/DCコンバータの一覧

まずはどんな種類があるのか一覧にまとめました。

<基本形>
一般的なDC/DCになります。やはり一番使われるのは降圧のBuckコンバータでしょう。
スマホの充電器やPC電源などにも数多く使われています。

項目 降圧型
(Buck型)
昇圧型
(Boost型)
反転型
(Invert型)
原理回路
特徴・利点 入力電圧よりも低い電圧に変換できる。動作原理が簡単で理解しやすい。出力リプル電流が小さい。 入力電圧よりも高い電圧に変換できる。Buck型よりも直感的に分かりにくいが、動作原理は理解しやすい。入力リプル電流が小さい。 入力電圧と符号が反転した電圧に変換できる。絶対値は入力電圧より高くも低くもできる。動作原理は理解しやすい。
欠点 入力電圧よりも極端に低い電圧に変換することが難しい。入力リプル電流が大きい。 入力電圧よりも極端に高い電圧に変換することが難しい。Buck型に比べてインダクタが大きくなりやすい。出力リプル電流が大きい。 入出力のリプル電流が大きい。絶対値が極端に異なる電圧に変換することが難しい。
コスト 比較的安価にできる。特に100%デューティ出力が不要ならICも非常に安価で入手できる。 Buck型に比べるとやや高価となる。(構成部品が全体的に高くなる) スイッチの出力側に負電位が加わるのでやや高価になりやすい。出力電圧が低ければBuck型を流用できるのでBuck型と同程度となる。

<昇降圧系>
昇降圧系はインダクタを2個使うことで昇圧も降圧もできるコンバータです。
回路自体は50年以上前からあったようですが、設計難易度が高く最近になるまでは殆ど採用されていませんでした。(従来はフライバックなどのようにトランスを使っていた)
それがIC技術の進歩で専用ICが出てきたことで近年では至る所で使われています。
(電気自動車や太陽光発電など、更に双方向化したものも使われます)

また、デカップリングコンデンサがあるので回路が動作していない時には入出力が直流的に遮断でき、スイッチが短絡・開放で破壊した時に出力側が安全に停止される。

ちなみに、今回は紹介していませんがスイッチを4つ使ってインダクタを1つだけにした “Buck-Boost型” というDC/DCやコンデンサとスイッチだけで作る “Charge Pump型” もあります。
“Buck-Boost型” は、Buck型とBoost型を自動的に切り替えられるようになっているので、原理的には単純です。(実際の製品 (IC) はもう少し複雑に切り替えて性能を良くしています)
“Charge Pump型” は、インダクタを使わないので小型・安価に作れます。但し、大きな電力には向かないです。(出力電流数A以下が殆ど)

項目 SEPIC型 Zeta型 Cuk型
原理回路
特徴・利点 一番メジャーな方式で専用のICも数多くある。入力のリプル電流が小さい。 SEPICの入出力を入れ替えたもの。なので出力のリプル電流が小さい。原理的にはBuck用のICを流用できる。 入出力電圧の符号を反転させることができる。スイッチング部分がSEPICと共通なのでSEPICと共用できるICがある。入出力のリプル電流が小さい。
欠点 出力のリプル電流が大きい。動作原理が理解しにくい。 入力のリプル電流が大きい。動作原理が理解しにくい。Zeta用と謳う専用ICが無い。(あれば教えて下さい) 大きな欠点はない。
コスト 比較的安価にできる。Boost型と同じ程度+インダクタ・コンデンサ。 Buck型が流用できれば割と安価にできる。 SEPIC型と同程度。

<フライバック>
トランスを使った絶縁型で最も簡単なフライバックも紹介します。
大きな変圧比が必要 (12V→400Vとか) だったり、絶縁したい場合に使えます。
但し、トランス (正確には違いますが) のエアギャップにエネルギーを溜めて2次側にエネルギーを伝達させるので、中電力以上 (目安は20~50W以上) には適しません。

項目 フライバック型
原理回路
特徴・利点 簡単に大きな変圧比の電圧が得られる。入力電圧よりも高くも低くもできる。トランスで入出力を絶縁できるので、GNDに電位差があっても使える。
欠点 エアギャップのあるトランスを使うので漏れ磁束が大きく、周辺回路・機器に与える影響が大きい。大電力の伝送には向かない。
コスト 絶縁型の中では部品点数も少なく比較的安価。

降圧型 (Buckコンバータ)

ではまずは、最も基本的なBuckコンバータです。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Buck.asc

動作原理

Buckコンバータは入力電圧をスイッチでDuty比の時間だけ供給して、LCフィルタで平均化することで降圧させています。
下の波形は上から Duty=10%, 50%, 90% と変えた場合のスイッチ直後の波形 (紫) とLCフィルタ後の波形 (緑) になります。

インダクタンスが十分に大きい (=電流リプルが直流成分に対して十分に小さい) 場合は、スイッチのON/OFFでの電流増減が一致するところで安定するのでここからDuty比と入出力電圧の関係が計算できます。
インダクタに流れる電流の増減は両端に掛かる電圧に比例します。従って、両端に掛かる電圧の比とDuty:(1-Duty)の積が1になる時に安定します。
この考え方はフライバック以外のここで紹介する全てに当てはまります。

Buckコンバータの場合は以下になります。
(符号は省略、Di・スイッチの電圧降下も無視)
 ・スイッチがON時 : 電流変化率(dI/dt)=(Vin – Vout)/L
 ・スイッチがOFF時 : 電流変化率(dI/dt)=Vout/L

$$
\frac{\frac{V_{IN}-V_{OUT}}{L}}{\frac{V_{OUT}}{L}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1
$$ $$
\frac{V_{IN}-V_{OUT}}{V_{OUT}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1
$$ $$
V_{OUT}=Duty\cdot{V_{IN}}
$$

シミュレーション

LTSpiceにて動作を確認します。
Diやスイッチが理想的な素子 (=電圧降下0V、スイッチング速度∞) ではないので計算上の出力電圧と若干ズレが生じます。
実際の設計では負帰還を掛けてDutyを自動的に調整するのでおおむねのDuty比が算出できれば問題ありません。

昇圧型 (Boostコンバータ)

続いてはやはりメジャーなBoostコンバータです。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Boost.asc

動作原理

BoostコンバータはスイッチがONしている間にインダクタにエネルギーを蓄えて、スイッチがOFFすると入力電圧にインダクタの分を上乗せするように出力電圧が上昇します。
これを数式を使って計算します。

BoostコンバータのインダクタにはスイッチON/OFFでそれぞれ、Vinと(Vout-Vin)の電圧が印加されることになります。

$$
\frac{V_{IN}}{V_{OUT}-V_{IN}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1
$$ $$
V_{OUT}=\frac{V_{IN}}{1-Duty}
$$

シミュレーション

LTSpiceにて動作を確認します。
こちらも理論式は理想素子として計算しているので誤差が出ます。

反転型 (Invertコンバータ)

基本となるDC/DCコンバータの最後は反転型です。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Invert.asc

動作原理

反転型はスイッチONの間にインダクタへエネルギーを溜めて、OFFした時に出力を引き込むように負電圧を発生させます。

こちらも数式で計算します。出力電圧の符号は省略してるのでご注意下さい。
ONの時はVinが、OFFの時はVoutがインダクタに印加されます。

$$
\frac{V_{IN}}{V_{OUT}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1
$$ $$
V_{OUT}=\frac{Duty}{1-Duty}\cdot{V_{IN}}
$$

シミュレーション

シミュレーションの結果は以下の通りです。ちゃんと反転されています。

SEPIC型

昇降圧型の中では最もメジャーです。近いうちに詳細設計を投稿予定です。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_SEPIC.asc

動作原理

SEPICの動作はパッと見では良く分からないですよね(笑)
Boostコンバータにコンデンサとインダクタが追加された回路です。

これで何が変わるかというと、Boostコンバータでは入力電圧以上の電圧しか出力できなかったものがデカップリングコンデンサに電荷が充電されることでこの入力電圧分を打ち消して降圧もできるようになります。
インダクタはこのデカップリングコンデンサに充電される電圧を安定させるように働きます。

ここで、デカップリングコンデンサに充電される電圧Vcを計算してみましょう。
インダクタと同様に十分に大きい容量であれば電圧は一定とみなせます。
電圧は入力側の電位が高い時に+となるようにします。

$$
\begin{cases}
\frac{V_{IN}}{V_{OUT}+V_C-V_{IN}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1 ~~~~~~(入力側のインダクタ)\\
\frac{V_C}{V_{OUT}}\cdot\frac{Duty}{1-Duty}=1 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~\,(出力側のインダクタ)
\end{cases}
$$ $$
\frac{V_{IN}}{V_{OUT}+V_C-V_{IN}}=\frac{V_C}{V_{OUT}}
$$ $$
(V_C-V_{IN})\cdot(V_C+V_{OUT})=0
$$ $$
V_C=V_{IN},\,-V_{OUT}
$$

解が2つでましたが、回路に当てはめるとVc=-VoutではスイッチのON/OFFでインダクタに掛かる電圧が同じになってしまい回路が動作していない状態になるのでVc=Vinがコンデンサに充電される電圧です。
これでVcがでました。
Boostコンバータからデカップリングコンデンサ分の電圧を差し引くと出力電圧になります。
(上の式にVc=Viを代入しても算出できます)

$$
V_{OUT}=\frac{V_{IN}}{1-Duty}-V_{IN}
$$ $$
V_{OUT}=\frac{Duty}{1-Duty}\cdot{V_{IN}}
$$

ちなみにですが、時々フライバックコンバータの1次側と2次側をコンデンサでつないだものだから昇降圧可能だ、という説明を見ますが正確だとは思えません。(回路図的にはその通りです)

その理由として、①エネルギーを溜める方法が異なる、②2つのインダクタは磁気的に結合している必要が無い、という2点が挙げられます。
まず①は、フライバックがトランスのエアギャップに “磁気的に” エネルギーを溜めるのに対し、SEPICはインダクタに “電流として” 蓄えます。
次に②は、フライバックは磁気的に結合している2次側が無いと回路が成立しませんが、SEPICは結合していなくても動きますし、2つのインダクタで同相の電流が流れます。(フライバックはスイッチON/OFFで交互に流れる)

考え方がどうであれ、最終的に得られる答えが同じならどっちでも良いと思います。
理解しやすい方でとらえて頂ければ結構です。

シミュレーション

シミュレーション結果を以下に示します。昇圧も降圧もどちらもできますね。

色々な部分の波形を見てみると勉強になると思います。
特に2つのインダクタの両端に掛かる電圧が同じになるので、実は同じコアに巻くことができます。これにより単独のインダクタよりも小型化ができます。
但し、出力が数A以下と小さい場合はそういった既製品が殆どない (CoilCraftにあるけど高価) なので単独のコイルにした方が安上がりになることが多いと思います。

※インダクタを結合するにはコマンドラインで “K12 L1 L2 1” とすれば良いです。但し、丸印が出るのでインダクタの向きは調整して下さい。

Zeta型

次はZeta型です。
回路を見て気付いたかもいると思いますが、SEPICの入出力を入れ替えたものです。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Zeta.asc

動作原理

動作原理は先ほどのSEPICの入出力を入れ替えただけだと理解して頂ければ十分です。
シミュレーションで波形を見ながら理解すると早いと思います。

計算式は省略しますが、入出力電圧とDuty比の関係はSEPICと同じです。

$$
V_{OUT}=\frac{Duty}{1-Duty}\cdot{V_{IN}}
$$

ちなみに、このSEPICとZetaの入出力関係がちょうど逆ということは、双方向に電力が送れるということです。それも入出力電圧の高低に関わらず、です。
双方向で電力をやり取りする必要がある場合などに大変有益だと思います。
(Buck-Boost型のDC/DCも同様です)

シミュレーション

SEPIC同様に昇圧も降圧も問題なくできます。

Cuk型

続いてはCuk型です。
こちらもSEPICと似ていて、出力側のインダクタとダイオードを入れ替えて出力される電圧を反転させた回路です。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Cuk.asc

動作原理

これもZetaと同様に出力側のインダクタの位置を入れ替えて電流の流れる方向を出力だけを変えたものだと考えて良いです。
波形を見ながらそこだけなんだなーということを見てみて下さい。

計算式は省略しますが、入出力電圧とDuty比の関係はSEPICと同じです。

$$
V_{OUT}=\frac{Duty}{1-Duty}\cdot{V_{IN}}
$$

反転型のDC/DCコンバータはインダクタ1つでも昇圧も降圧もできました。
では、なぜインダクタを2個も使うのでしょうか?

それは入出力のリプル電流を大幅に低減できるからです。
リプル電流が大きいと周辺回路への影響も大きく、リプル電流を吸収できるだけの大きな入出力コンデンサが必要になります。
また、外部回路にリプルが出るとリプル電流の電流ループが大きくなることになるのでノイズも大きくなりがちです。(上手く設計すればマシかもしれませんが現実的には厳しいです)

それと、SEPICとコントローラ部分が共通にできるので部品の種類を減らせます。
ICメーカも共通化して売れるので安価に提供しやすくなります。

シミュレーション

ちゃんと反転できていますね。
リプル電流も見てみて下さい。CukとInvertでは全然違って驚きますよ!

フライバック型

最後はフライバック型です。絶縁型にはこんなものもあるよ、という程度で見て下さい。

LTSpiceのファイルを以下に添付しておきます。
DCDC_Flybuck.asc

動作原理

フライバックは1次側の巻き線に電流を流して、トランスのエアギャップにエネルギーを溜めて1次側のスイッチをOFFした瞬間に2次側から溜めたエネルギーを取り出します。
エアギャップの無いトランスでも原理的には動きますが、フライバックで使うと直ぐに磁気飽和してしまってエネルギーが溜められません。
磁気飽和を防ぐためにかなり広めのギャップを設けてそこにエネルギーを溜め込みます。
(普通のトランスは1次側と2次側に同時に電流が流れて励磁電流以外は打ち消しあうのでギャップが無いくても磁気飽和しません)

トランスを使っているので簡単に大きな変圧比が得られるのが最大の利点です。
回路自体も単純で設計も比較的容易です。

シミュレーション

Boost型だったらうまくいかないような12V→120Vの10倍昇圧です。
Duty比を変えれば出力電圧の調整もできます。

まとめ

以上、DC/DCコンバータについてまとめました。

色々な種類があるので、その時にあった回路を選ぶことが大事です。
複数の選択肢の中からその時に最適なものを見つけて下さい。

困りごとがあれば設計のお手伝いもしますので、ご連絡下さい。
コメント欄に書けない場合はお問合せから連絡頂ければメールにて連絡させて頂きます。

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