2018年1月31日(水)/ 2018年2月1日(木)/ LTSpice, アナログ回路, スイッチング回路, 電子回路

今日はDC/DCコンバータに於けるマイナーループでの負帰還についてです

負帰還 (NFB) は回路全体に掛ける「オーバーオール (メジャーループ) NFB」と局所的な部分に対して掛ける「マイナーループNFB」に大別されます
オペアンプに代表されるアナログICでは、それを使う設計者は、オーバーオールのNFBしか意識していない (する必要がない) 場合が殆どです

そこで、マイナーループで負帰還を掛けることでどんな作用があるのか、その効果と考え方をまとめます

その中でも私が最も良く効果が見えると考えているDC/DCコンバータを例に挙げて解説します

本記事では、LTSpiceを用いて説明するので実際に定数等いじって遊んでみると面白いと思います
インストール方法はアナログ回路シミュレータ「LTSpice」のススメをご参照下さい




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マイナーループNFBとはどんなもの?

実は、アナログ回路では結構当たり前に皆さん使っています

ただ、余り負帰還だと気付かずに使っていると思います
例えば、以下のような回路です

え!?どこが??と思った方も居ると思います

この回路では出力から入力に負帰還は掛かっていませんが、入力であるベース端子と “エミッタ端子” に信号が入力されていますよね?
エミッタ端子には出力電流に応じた電圧が印加されているので、この部分が局所的なマイナーループの負帰還といえる場所になります

納得できない方は以下の考え方をしてみて下さい
 ・もし、帰還が掛かっていなかったら出力はトランジスタの特性により大きく左右されるはず
 ・しかし、この回路の増幅率は “R2/R1” 程度とトランジスタに無関係
  (小信号で適切に設計した場合)
 ・つまり、何かしらの負帰還が掛かっていると考えられる

逆にオーバーオールで負帰還を掛ける場合は、できるだけ裸の増幅率を高くしておいた方が有利なことが多いので、この回路のR1と並列にコンデンサを接続することがあります
こうすることで、交流的にコンデンサが短絡とみなせる周波数領域では、トランジスタの素の高い増幅率で使うことができます

ここで、じゃあそもそもR1付けなければ良いじゃん?と考えた方、R1が無いと直流的な動作点が安定せず設計が難しくなってしまいますので、直流まで増幅したい場合を除いてはR1とコンデンサを並列とした方が無難です
前段の構成等、時と場合に依るので、そこは設計ノウハウですね



なぜ、マイナーループで負帰還を掛けるのか?

大きく3つあります
どれも設計を簡単・確実に、そして高性能にする為に織り込みます

素の特性が悪い部品 (回路) の動作を設計できるレベルまで安定させる

一つ目は、そもそもの特性が悪い場合にそれを設計できるレベルに持っていく為です

その代表的な例が、先ほどのBJTによるエミッタ接地増幅回路です

一般的に半導体部品は特性自体のバラツキが非常に大きく、hfeなどは平気で最大/最小で数倍以上の開きがあります

参考までに東芝の2SC1815を例にとると、以下のように10倍も差があります

1という信号を入力したらものによって出力が70~700までバラツきます
それも悪いことに電流値や温度によっても大きく違いが出ますよね

アナログ回路の設計をしたことない人から見れば、こんなんで設計できるか!と怒られそうなバラツキですが、負帰還を掛けることでスッキリと安定させることができます

もしこのエミッタ接地増幅回路がアンプの中の一部であるなら、動作点が安定するギリギリ程度までの (マイナーループ) 負帰還に抑えて、全体にオーバーオールで負帰還を掛けて全体の増幅率を決めるといった使い方になります

もちろん1段だけの増幅回路ならガッツリ負帰還を掛けて、必要な特性が得られるようにします


オーバーオールでの位相補償を簡単にする

次は、位相補償の簡略化と安定性を確実にする目的でマイナーループで負帰還を掛けます

例えば、汎用のオペアンプでは、よほど変な使い方をしない限り発振しないように内部で高域が落ちるように負帰還が掛けられています
こうすることでオペアンプを使う設計者はオペアンプの内部回路を気にしないで、つまりどのオペアンプでも同じように、回路を設計することができます

※オペアンプの多くは、低い周波数から位相を90℃遅らせて1次 (-6dB/oct) の割合で増幅率を落としています
 これにより位相補償を気にせずにオーバーオールで負帰還を掛けても安定して動作します

このあと説明するDC/DCコンバータではマイナーループが無いと設計は困難です
負帰還ループにCとLが入る2次遅れ系となり、オーバーオールだけでは所定の特性を満たすことができなかったり (応答が遅い、振動が収束しない、など)、無茶な設計にせざるを得ない場合 (大きな容量のセラコンが必要になる、など) が出てきます
※イマドキの小型・軽量で高速性が求められる用途では特に


そもそもオーバーオールで負帰還を掛けられない、掛けたくない

最後は、オーバーオールで掛けられない場合にマイナーループが活躍する場合です

どんな回路でもオーバーオールで掛けられるとは限りませんよね?
最終段が回路の外部にあるや遠く離れている場合などです

外部で更に増幅段を持つ場合は、最終段に出力する前に特性を整えてしまわなければなりません
ちょっと括りが大きすぎますが例えば、オーディオアンプでDAC変換があって、プリアンプがあって、メインアンプに繋がるといった場合などはオーバーオールでは掛けられませんので、それぞれのアンプである意味で「マイナーループ」の負帰還が掛かります
(どこをマイナー、オーバーオールというかは、ものの捉え方に依ります)

また、ここでいう外部とは自分の設計する範囲外という意味でもそうです
複数人で回路設計していれば、担当範囲があるので “前後段も含めて” というと連携が難しいと思います

もう1つ例を出すと、出力段が入力段から離れてしまっている、ノイズが乗りやすいパターンになっている場合、オーバーオールで掛けると容易に発振してしまったり予期せぬ誤動作が起こります
こういう場合もマイナーループで特性を整えてから最終段に出力してやると良い場合があります

電流出力のアンプなどは途中の配線抵抗の影響を受けずに出力できるので便利です
オーバーオールで掛けると配線が増えたり、配線抵抗の影響で誤差が出たり、ノイズが乗って誤動作するといった可能性もあります

AnalogDevices (旧LinearTechnology) 社のLT6106などは典型的な電流出力型のアンプでオーバーオールでの帰還はありません



実際の効果はどんなものか?

では、最後にDC/DCコンバータの負帰還ループを例に効果を見てみます

今回はスイッチングを省略したBuckコンバータのスイッチング周波数より十分低い周波数での等価回路で検討します
Buck (降圧) コンバータのスイッチング段は十分低い周波数では定電圧源とみなしても良いので、電圧制御電圧源に置き換えてモデル化します
定数は適当に決めているので、実際にこんな特性のものがあるわけではないです
(あるかもしれないですが、意識はしてません)

・Esw : スイッチング段の電圧制御電圧源 (遅れは考えない)
・Gerr と Ro : エラーアンプとその出力抵抗 (遅れは考えない)
・Rp と Cp : 位相補償用のCR
・Vloop : ループ特性確認用のAC電圧源

とりあえず細かいことは置いておいていきます(笑)

以下に今回使ったLTSPice用のファイルを添付するので興味があれば遊んでみて下さい
 ・NFB_sample_majorloop.asc
 ・NFB_sample_minorloop.asc

オーバーオールの負帰還だけの場合

今回の定数だとL1とC1によって、fp=1/(2π√(L1*C1))≒5.04kHzにポールができます
ここで急激に位相が180度ズレるので、負帰還を掛けると見事に発振します
(今回は増幅段の周波数特性を無視している為)

そこで、発振しないように位相補償素子の定数を調整すると、Rp=0.1Ω、Cp=10uFです
では、この回路でループ特性を見てましょう

うーん、、、発振はしないだろうけど、安定性はなさそうですね
過渡解析をすると以下のようになります

立ち上がりも遅いし、負荷の急変時の安定性が非常に悪いですね

それに位相補償回路に10uFのコンデンサが必要になってますが、現実問題ではこんなに大きなコンデンサを位相補償回路に載せるほどパターン的に余裕はないはずです
仮に基板が広かったとしても、パターンの電流ループを最小限にする為に邪魔になることは明白です

こんな感じで特別なことをしないで簡単に設計すると特性も悪く、部品定数も現実的ではないものになってしまう可能性が高いです


マイナーループの負帰還を加えた場合

では、マイナーループを追加してみましょう

追加する場所は、L1の電流です
こうすることで、スイッチング段とL1が “ただの電圧制御電流源” に見えるようになります!

これは、L1の電流×0.1Ωがエラーアンプの出力電圧に等しくなるように負帰還が掛かるためで、出力端子から見るとL1があたかも存在しないように振る舞います
従って、オーバーオールの負帰還では2次系でしたが、マイナーループを追加するとCとRだけのシンプルな1次系となります

ループ特性を見てみると以下のように位相補償要らずです

※実際に設計するなら位相余裕がもう少し取れるように調整します

過渡解析でもオーバーオールだけと比較すると応答も早く、収束も非常に優秀です

そして、何よりも嬉しいのが最近のDC/DCコンバータ用のICは電流制御という表現で上記のようなマイナーループを内部で持っていて位相補償が非常に簡単に行えます♪



まとめ

以上、簡単ですがマイナーループの負帰還に関して説明しました

理解して使えばとても便利で有意義な帰還の考え方ですので、ぜひ使ってみて下さい

ご質問や間違いなどはコメント欄か問い合わせフォームよりお願いします


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