【理論的に】パンフォーカスする為のピント位置と絞り値について【計算してみた】

先日、ボケ量の計算式について投稿しましたので、ボケ表現とは対極にあるパンフォーカスについて考えていきます。

一般的に、パンフォーカスと言えば写っている範囲全てにピントが合って見えることですが、例えば集合写真で前の列と後ろの列の全ての人の顔にピントが合うようにしたいという場合にも応用できます。

以下の写真は、f=30mm、f/9.0 でパンフォーカスを狙っています。
手前の岩までがおよそ5mで奥の滝までがおよそ50~60mほどです。
計算上、長辺が2400px (ブログ用に縮小) なので許容錯乱円はおよそ9.79umになるので、ピントを9.2mにしてf/8.4以上でパンフォーカスが得られます。


パンフォーカスとは?

パンフォーカスとは、写真に於いて写る範囲全てにピントが合って “見える” ことを指しています。
(この “見える” が曲者で人によって基準が異なります)

風景などを撮影する場合によくパンフォーカスは用いられますよね。
APS-Cやフルサイズだと f/8~f/16 辺りが良く使われます。

センサーサイズが小さいスマホやコンデジなどは絞らなくても十分にパンフォーカスになります。

パンフォーカスにする方法

では、早速パンフォーカスについて考えていきます。

一般的には、以下のようにすればパンフォーカスになります。

  • 焦点距離の短い広角レンズを使う (若しくはセンサーサイズを小さくする)
  • 絞り値を大きくする
  • 近くのものが写真に写らないようにする (遠景を撮る)

ピントが合っているとはどういう状態?

ピントが合っているとはいったいどういう状態なのでしょうか?

フィルム時代には許容錯乱円の直径が25~35um程度以下になった場合とされていたようです。
35mmフィルムで撮影し、L判~A3で鑑賞する前提で設定されています。

本記事では一般的な印刷物の解像度である300dpiでA4用紙に印刷する場合にボケていないといえることを “ピントが合っている” の判定条件とします。
この場合はセンサーサイズによって許容錯乱円の直径が変わります。
以下に各サイズでの許容錯乱円の直径を示します。
$$
C[um/dot]=\frac{センサーサイズ横幅[um]}{\frac{297mm}{25.4mm/in}\cdot300dpi}
$$

  • フルサイズ : Φ10.23um
  • APS-C : Φ7.01um
  • m4/3 : Φ4.93um

錯乱円の理論式とピント位置の算出

式の導出などは、ボケ量の記事をご確認下さい。

$$
C(D’)=\frac{f}{A}\cdot\frac{1-\frac{D}{D’}}{\frac{D}{f}-1}
~~~~
\begin{cases}
C : 錯乱円の直径
f : レンズの焦点距離 \\
A : 絞り値 (f/8などの8) \\
D : ピント位置 \\
D’ : 錯乱円を計算する光源の位置
\end{cases}
$$

ここで、パンフォーカスにしたい被写体の中で最も近い位置をD1’、最も遠い位置をD2’とします。
ピント位置は、D1’とD2’での錯乱円が同じ大きさになる位置にすると錯乱円が最小になるので、D1’とD2’で同じ錯乱円になるようにピント位置Dを計算します。
前ボケ後ボケで符号が逆になるので前ボケの符号を反転させて絶対値を外します。

$$
|C(D_1′)|=|C(D_2′)|
~~~~
※|X|はXの絶対値
$$ $$
\frac{D}{D_1′}-1=1-\frac{D}{D_2′}
$$ $$
\frac{D}{D_1′}+\frac{D}{D_2′}=2
$$ $$
D=\frac{2}{\frac{1}{D_1′}+\frac{1}{D_2′}}
$$

これでピント位置が定まりました。

パンフォーカスになる絞り値の算出

続いて先ほどのピント位置から錯乱円の直径を計算して、それが許容錯乱円C0になるように絞り値を計算してみます。
これは、代入して整理するだけです。
一番近い点でも遠い点でも同じなので、遠い点で計算します。(近い点だと符号が逆になるだけ)

$$
C_0=\frac{f}{A}\cdot\frac{1-\frac{\frac{2}{\frac{1}{D_1′}+\frac{1}{D_2′}}}{D_2′}}{\frac{\frac{2}{\frac{1}{D_1′}+\frac{1}{D_2′}}}{f}-1}
$$ $$
C_0=\frac{f}{A}\cdot\frac{\frac{1}{D_1′}-\frac{1}{D_2′}}{\frac{2}{f}-\frac{1}{D_1′}-\frac{1}{D_2′}}
$$ $$
A=\frac{f}{C_0}\cdot\frac{\frac{1}{D_1′}-\frac{1}{D_2′}}{\frac{2}{f}-\frac{1}{D_1′}-\frac{1}{D_2′}}
$$

上式にて絞り値も計算できますね。

では、ピント位置と絞り値を計算しよう!

一番近い点と遠い点をそれぞれ変化させてピント位置と絞り値を計算してみます。
計算の都合上、近い点は1~10m、遠い点は11~9999m (無限遠相当) とします。


望遠レンズの場合も計算してみましょう。焦点距離200mmにして10m~で考えます。


スマホ (代表でiPhoneX) のカメラについて考察

スマホやコンデジのカメラは全然ボケませんよね。どうやってもほぼパンフォーカスです。
これは、センサーサイズの小く焦点距離も短くなり絞り値が小さくてもフォーカスが合いやすい為です。

では、実際にどんなものか計算してみます。
今回はスマホ代表として “iPhoneX” のカメラを例にしてみます。

iPhoneXのカメラスペックは以下のようです。

項目 センサーサイズ 焦点距離 絞り値 解像度
広角カメラ 4.0mm 1/2.9型 f/1.8 4,000 × 3,000px
望遠カメラ 6.0mm 1/3.6型 f/2.4 4,000 × 3,000px

先ほどまでと同様にA4用紙/300dpiを基準とすると、広角カメラのセンサーサイズは4.55×3.41mm程度と思われるので許容錯乱円はΦ1.30umです。
iPhoneのカメラのレンズは絞りが固定です。

無限遠からf/1.8でどこまでピントが合うか計算するとおよそ3.4mになります。

望遠レンズも同様に計算すると7.2m~∞でピントが合います。

iPhoneXで無限遠までパンフォーカスにしたい場合は、広角カメラでは3.4mより手前を、望遠カメラでは7.2mより手前を写さないようにすればOKです。
iPhoneXの画面上で拡大しない場合は、許容錯乱円がΦ3.04umまで広がるのでこの時は、広角カメラで1.5mまで、望遠カメラで3.1mまで許容できます。

まとめ

以上、パンフォーカスを実現する方法でした。

どなたかの参考になれば幸いです。


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